自宅サロンの確定申告（青色申告）完全ガイド｜経費の分け方（家事按分）

ようこそ、自宅サロン経営で避けて通れない「お金の管理」専門ガイドへ

日本アロママイスタースクール講師の藤井です。

自宅サロンの開業を決意した方が次に抱える大きな不安は、「法律違反にならないか？」「保健所への手続きはどうすればいい？」といった、行政手続きや許可に関する疑問でしょう。

特に、自宅を職場にするからこそ発生する「家事按分（かじあんぶん）」という複雑な経費処理に不安を感じるのは当然のことです。

ご安心ください。

私たちが多くの卒業生を見てきましたが、確定申告は最初の仕組みさえ作ってしまえば、決して難しいものではありません。むしろ、青色申告を正しく行えば、最大限の節税メリットを受け取ることができます。

この記事では、自宅サロンのオーナーが知っておくべき「確定申告の基本」と、最もつまずきやすい「家事按分の具体的な計算方法」を、初めての方にも分かりやすく、具体的な例を交えて解説します。

この記事を最後まで読めば、お金に関する不安を解消し、安心してサロンワークに集中できるようになりますよ。

まずは、自宅サロン開業の全体像について「自宅サロン完全ガイド」ページをご確認ください。

なぜ自宅サロン開業には「青色申告」が必須なのか

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類がありますが、事業として自宅サロンを成功させたいなら、青色申告の選択は必須です。

青色申告最大のメリット：最大65万円の特別控除

青色申告を選択する最大の理由は、最大65万円の「青色申告特別控除」を受けられることです。

これは、あなたの所得（売上から経費を引いた利益）から、一律で最大65万円を控除できる制度です。控除額が大きければ大きいほど、課税対象となる所得が減り、結果として納める税金が安くなります（節税）。

この大きな控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

1. 開業届の提出：事業開始から1ヶ月以内に税務署に提出。
2. 青色申告承認申請書の提出：原則、開業から2ヶ月以内、またはその年の3月15日までに税務署に提出。
3. 複式簿記での記帳：会計ソフトを使えば簡単に行えます。

白色申告との違い（メリット・デメリット）

自宅サロンの経費はどこまで認められる？（家事按分の必要性）

「経費」とは、売上を上げるためにかかった費用のことです。自宅サロンでは、完全に事業専用の経費と、私生活（家事）と事業で共通して使う経費の2種類があります。

1. 全額経費にできる「事業専用経費」

これらは、事業活動にのみ使用されるため、全額を費用として計上できます。

• 消耗品費：アロマオイル、精油、キャリアオイル、ハーブティー、タオル、シーツ、施術用備品。
• 広告宣伝費：チラシの印刷代、ポスティング代、SNSやWebサイトの広告費、名刺代。
• 研修費：技術向上のためのセミナー受講費、教材費（資格取得費用など）。
• 通信費：サロン専用に契約した携帯電話代、予約システム利用料。
• 租税公課：事業用の固定資産税、印紙代など。

2. 最難関「家事按分」が必要な経費

自宅サロンならではの経費が、生活費と事業費が混在しているものです。これを「家事按分」といいます。家事按分とは、総額のうち「事業で使用した割合」を算出し、その割合分だけを経費として計上することです。

家事按分を行うことで、家賃や光熱費の一部を費用にできるため、大きな節税効果があります。

最難関「家事按分」の計算方法を具体的に解説

家事按分で最も重要なのは、「客観的かつ合理的な根拠」に基づいて割合を算出することです。感情や感覚ではなく、面積や時間といった数値で説明できるように準備しましょう。

家賃の分け方（面積比率の計算例）

賃貸や持ち家に関わらず、自宅をサロンとして使用している部分の面積を計算し、全体に占める割合を経費とします。

計算式：面積比率

例：家賃の計算

• 自宅全体の面積：80㎡
• サロン専用の部屋の面積：10㎡
• 按分率：10㎡ ÷ 80㎡ = 12.5%

家賃が月10万円の場合、年間120万円 $\times 12.5\% = \mathbf{15万円}$ が経費として計上できます。

電気代・ガス代・水道代の分け方（使用時間と使用状況）

光熱費は、家賃のように面積で分けるのが難しい場合が多いため、「事業で使用した時間」で按分するのが一般的です。

計算式：時間比率

例：電気代の計算

• 1日の総時間：24時間
• サロン営業に使った時間：1日6時間
• 按分率：6時間 ÷ 24時間 = 25%

インターネット代・携帯電話代の分け方

通信費は、事業専用の回線や端末を契約している場合は全額経費ですが、自宅の共有回線を使用する場合、使用時間や頻度で按分します。

例：インターネット代の計算

• 1日の使用時間：8時間（事業4時間、私用4時間）
• 按分率：4時間 ÷ 8時間 = 50%

私用と事業用でどれだけ使っているかを、自分で決めた合理的な基準に基づいて計算し、その根拠をメモしておきましょう。

青色申告を簡単にするための「おすすめの会計ソフト」

「複式簿記」と聞くと難しそうですが、現在は優秀な会計ソフトがあるため、初めての方でも簡単に行えます。

会計ソフト導入のメリット

1. 銀行口座・クレジットカード連携：入出金データを自動で取り込み、記帳の手間が大幅に削減されます。
2. 確定申告書類の自動作成：日々の記帳データに基づき、青色申告に必要な「損益計算書」や「貸借対照表」などの書類を自動で作成してくれます。
3. 家事按分機能：按分率を設定しておけば、毎月の支払い時に自動で事業経費を計算してくれます。

自宅サロンオーナーにおすすめのソフト

クラウド型の会計ソフトは、初心者でも使いやすく、税制改正にも自動で対応するため特におすすめです。

• 弥生会計：シンプルで初心者向け。
• freee会計：操作性が直感的で、スマートフォンでの入力にも対応。
• マネーフォワードクラウド確定申告：複数のサービスと連携しやすい。

まとめ：金銭的な不安を解消し、技術習得に集中しましょう

自宅サロンの経営において、確定申告と家事按分は必須の知識ですが、決して恐れる必要はありません。

金銭的な不安を解消できれば、あなたは技術とお客様へのホスピタリティに集中できます。

• 行動の第一歩：税務署に開業届と青色申告承認申請書をセットで提出すること。
• 日々の習慣：会計ソフトを導入し、領収書やレシートをこまめに記録すること。

記事執筆者・監修者プロフィール

藤井由香（ふじいゆか）：
日本アロママイスタースクール 講師 / CIDESCO国際ライセンス保持者

ビューティー関連専門学校を卒業後、大手エステティック会社で7年間勤務。
その後、当社直営サロン「Bodysh」で2年間施術経験を積み、平成30年より当スクール講師として活動しています。
現場経験と教育の両方に精通し、これまで多くのセラピストを育成してきました。

専門分野

• 自宅サロン開業コンサルティング
• アロマ・リンパマッサージ技術指導
• エステティック技術全般
• 国際基準に基づく施術指導

保有資格

• ・IBCA認定 講師資格
• ・IBCA認定 国際ボディセラピスト プロフェッショナル資格
• ・日本エステティック協会 認定上級エステティシャン資格
• ・日本エステティック協会 認定トータルエステティックアドバイザー資格
• ・CIDESCO-NIPPON 国際ライセンス（CIDESCOエステティシャン資格）